『イタリアン・シューズ』
『イタリアン・シューズ』
ヘニング・マンケル (著), 柳沢 由実子 (翻訳)

かつて恋人と交わした、
人生で一番美しい約束を果たすため、
男は旅に出るの著者、
北欧ミステリの帝王が贈る孤独な男の贖罪と再生、
そして希望の物語

ひとり島に住む元医師フレドリック。ある日彼のもとに、四十年前に捨てた恋人ハリエットがやってくる。治らぬ病に冒された彼女は、星空のもと森のなかに広がる美しい湖に連れていくという昔の約束を果たすよう求めに来たのだ。かつての恋人の願いをかなえるべく、フレドリックは島をあとにする。だが、その旅が彼の人生をを思いがけない方向へと導いていく。〈刑事ヴァランダー・シリーズ〉の著者が描く、孤独な男の希望と再生の物語。


マンケル のノンシリーズの最新訳出作。今年の4月に刊行されたみたい。
マンケル がガンを発病してからの作品なのかなと思いきや、全然そうではなくて2006年にマンケル が56歳のときに発表された作品だそう。

1人で島に暮らす初老の男性の孤独な生活がどのように変化していくか。

人生の晩年にかかった時に、おそらく多くの人が自分はこのまま何もせずに老いて死んでいくだけなんだろうか、という問いを抱くと思うのだけれど。スウェーデンの小さな島に暮らす老齢期に差し掛かった男性の自分の人生への自省と現在の暮らしへの不満や問い、そしてストーリーが進むにつれて見えてくる未来への期待。

マンケル らしく、男性はうじうじしていて、女性が強いんだけれど(笑)。
静かに、時に激しく。

ヴァランダーシリーズを読んできたのと、自分が老いつつあること。そして病を得たことがあるからこそ、余計に感じるものがある小説かもしれない。

これを読んでかれの遺作のエッセイ集である『流砂』↓↓を続けて読み始めたので、その人生観がしみじみと。
これは、私の生きる条件を変えた十日間の真実である。流砂は人を呑み込み地獄に通じる穴だが、私はなんとかそれに嵌まらずにすんだ……。がんの告知を受けた北欧ミステリの帝王マンケルは何を思い、押し寄せる絶望といかに闘ったのか。遙かな昔、人類が生まれてから今日まで、我々は何を受け継ぎ、そして遠い未来の人々に何を残すのか。〈刑事ヴァランダー・シリーズ〉の著者の最後の作品。闘病記であり、遺言でもある、魂の一冊。


しかし、地域の天候と人々の性格が関連するっていう傾向は本当に興味深いよね。
マンケル の作品は、本当に寒い地域での、性格も reserved というか心を閉ざした主人公と冬のスウェーデンがしっくりくるし。

マンケル が小説を書いた舞台がフロリダやスペインだったら、きっと全然違うだろうなぁと思ってしまう。

静かな凍った湖。寒いのは本当に苦手だけれど、少しだけ憧憬が生まれた気がするのは、きっと気のせいじゃない。

へへへ。



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